RFIDハンディ・リーダとは
物品に取り付けたRFIDタグの読み取りには、ハンディ・リーダのほうが便利なことも多く、(一社)日本自動認識システム協会の調査によると、ここ数年ハンディ・リーダの出荷台数は固定型リーダの台数と拮抗しています。高出力(最大送信出力 1 W)のハンディ・リーダは棚卸し作業などのように、多くのタグを同時に高速で読み取る作業に適しており、最大出力250 mW(あるいは500 mW)の特定小電力リーダは、1個だけか多くても数個程度のタグを読み取る作業に適しています。
屋外でのハンディ・リーダの運用では、最大送信出力1 Wの製品が多く利用されています。屋外での運用においては、タグとの交信距離が長いケースが多く、必然的に高出力のリーダが求められます。固定型のリーダであれば、アンテナをリーダから離して設置できるためアンテナのサイズに制限がなく、高いゲインのアンテナを接続することができます。しかしハンディ・リーダの場合はリーダの本体内にアンテナを組み込むため、ゲインの高いアンテナを組み込むことは難しく、固定型のリーダほどには読み取り距離を長くすることができません。最大送信出力1 Wのハンディ・リーダの多くにはキャリアセンス機能(後述)が組み込まれており、無線局登録申請を行ったうえで、運用開始から2週間以内に開局届を提出することが求められます。
特定小電力リーダでは送信時間制限が規定されており、電波を送信してから4秒以内に5 ms以上のキャリアセンスを行い、50 ms以上の休止期間が設けられます。そのため、同じエリアで複数のリーダを運用する場合には、送信に休止期間があることを意識しておく必要があります。キャリアセンスの機能は、複数の無線機が運用されている環境で他の無線機が使用されていないことを確認してから送信を行うことにより、無線の干渉を解消する仕組みであり、LBT(Listen Before Talk)とも呼ばれています。
また最大送信出力 250 mWあるいは500 mWの特定小電力ハンディ・リーダは、作業性を考慮してコンパクトなサイズに設計されています。送信出力が 250 mWであれば組み込むアンテナのゲインは最大で 3dBiに設定することができますが、コンパクトな外形に組み込むことができるアンテナのゲインは高くても 0 dBi程度になります。ゲインが 0 dBiの場合には、最大送信出力は 500 mWに設定することが許されています。ただし、パッシブタグとの交信距離(サービスエリア)は最大でも2メートル程度と規定されており、もともと離れた距離での読み取りを想定している製品ではありません。